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姫巫女さまの夜伽噺
第10章 人間の世界
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目を開けると、自分の口元に
酸素の吸入器が付けられているのが分かった。
不思議と喉の渇きはなく
伊良は目を開けると、体を起こす。
「っ…!」
点滴が打たれていた腕を曲げたせいで
痛みに朦朧としていた意識がはっきりとしてくる。
見れば、病院の個室のようで
点滴に酸素マスク、そして、厳かに規則正しく心電図が映されていた。
「私…」
辺りを見渡していると
ちょうど回診の時間なのかコンコンととを叩かれた。
失礼しますと言って、看護師の若い女性が入ってくる。
ベッドから起き上がった伊良を見て
「あっ!」と声を上げると、駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?」
今、ドクターを呼んできますね!
大慌てで看護師は去っていった。
体の節々が痛く、呼吸を深くすると
鎖骨のあたりが軋んで痛んだ。
「私…」
(何やってたんだっけ…?)
思い出せるような
思い出せないような。
何か、大切なことを忘れているような。
そうこうしているうちに
主治医が現れて、聴診器をあてて、脈を診始める。
心電図も入念にチェックした後
問診が始まった。