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姫巫女さまの夜伽噺
第2章 目覚めし巫女
「ここは御霊の神泉(みたまのしんせん)。
様々な神、妖怪が癒されに来る場所だ。
人間の来る場所ではない」
志摩はそう話しながら
愛蘭の肩に湯をかけた。
「だがお前は来てしまった。
しかも、瀕死の状態でだ。
ここは妖たちの治癒はできても
人間の治癒はできない。
だから、お前の意思が無ければ
俺が治すこともこの湯に浸ける事さえできないんだ」
「意思?」
「ヒズミから入ってしまったお前は
こちらの世界では、いわば、異分子だ。
だから、こちらの世界がお前を排除しようと動く。
その痛みは、酷かっただろ」
言われて愛蘭は
あの激痛を思い出し
それだけでまた体中が痛みだしかねなかった。
「うん…本当に死ぬかと思った」
だけど、痛くて死ぬのは嫌だな
などと、未だにぼうっとする思考能力が落ちた脳の片隅で思った。
「だから、ここに来たのは自分の意思だという事を伝えなければ
お前はあのまま苦しんだ挙句、魂ごと滅びただろうな」
「それは、嫌だな…。
せっかくひどい現実から逃れたんだもん…。
滅びるくらいなら、生まれ変わりたい。
生まれ変わったら、多少は誰かに心から愛されたり
いたわってもらったりしたいな」
「まあ、滅びてないから
いくらでもやり直せるだろ」
そんな事を言いながら
愛蘭の肩にかけるお湯は温かく
まるで志摩が優しく思えてしまった。