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姫巫女さまの夜伽噺
第10章 人間の世界
「くそ、ぬかったか…!
今行く、案内しろ!」
嫌な予感、胸騒ぎ。
宿の様子がおかしいのは、このためかと志摩は舌打ちをする。
伊良はおそらく何者かにさらわれたのだろう。
「僕も行くよ」
穂高が身を起こし、そして、志摩はそれを静止した。
「だめだ、穂高。まずは俺が行く。
その姿で誰かに見られたらまずい」
「だけど、放っておくことはできない」
「分かっている。だからこそ、お前は準備をしていろ。
何かあった時に、すぐに動ける準備だ」
穂高は納得しかねる顔をしたが
志摩の「頼むよ、穂高…」という声に
首をゆっくりと縦に振った。
「分かった。準備しておく。
志摩がそう言うってことは、もしかすると…」
「ああ。万が一だけど、人間の世界に戻ってしまっていたら
俺のほうは太刀打ちできない」
「分かった。行って。ちくいち式を飛ばしてくれ」
「ああ」
志摩は障子を閉めることもせずに、駆け出して行った。