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姫巫女さまの夜伽噺
第10章 人間の世界
結界を抜けると双子が飛びついてくる。
志摩は双子を抱きとめると、そのまま駆け出した。


「急ぐぞ。お前たちがこれを見つけたのか?」


双子たちは気が動転してしまっているのか
近江は目をきょろきょろさせ、美濃の顔は青ざめている。


「いえ…女中が見つけて、私に報告をしてきました」


「なるほど。で、様子はまだ見に行ってないな?」


「はい…。先にお知らせしようと思って…」


志摩は周りの女中たちがきゃあきゃあ騒ぐのをよそに
ものすごい勢いで宿の廊下を駆け抜ける。


「…美濃、嫌な予感がする…」


「お前がそう言う時は、よくないことが起こる時だよな、決まって。
今回に限り、そうじゃないことを祈ってるんだが…」


そうして睦月の館について、桐壷の間に入る。
そこには特に変化はなく、いつも通りの空間が広がっていた。


「志摩様、あっち…」


美濃が指差した方向に、見たことのない道があった。
いかにもと言わんばかりに、霞がかかっている。
志摩と双子たちは、その道へと向かった。
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