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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界
そろそろ解放してやるよ。
朽葉はそう言って伊良の口から逸物を引っこ抜くと
さっさと自分の着物を着始めた。



(……志摩…会いたい…)



『…い…ら…』


ふと、志摩の声がしどこからか聞こえた気がした。


「志摩?」


あまりにも辛い現実から逃れるためか。
痛みに思考が追いつかなくなったか。
わからないが、気がつけば伊良は志摩の名前を口にしていた。


「お前っ…まだそいつの名前を呼ぶか!」


機嫌が良かった朽葉の顔が
みるみるうちに怒りに変わり
恐ろしい形相で伊良の元へ来ると
彼女の髪の毛を鷲掴みにした。


「いやっ…痛い…はなして…」


声は喉に絡まって出ない。
恐ろしい顔をした朽葉が
牙を生やしながら伊良の顔に迫った。


「二度とその名前を呼べないように
今すぐお前の舌を食いちぎってやろうか!」


「いやあっ…もう、やめて、お願い…」


「だったら俺のいうことだけ聞け!
二度とあいつの名前を口に出すな!」
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