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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界
泣きながら伊良は朽葉を見た。


「なんで、そこまで嫌うの…?」



(あんなに、優しい人なのに…)



不器用で、繊細で、それでいて俺様。
伊良にとてつもない愛情を向け
そのせいで、自分が傷ついてしまうほど。


そして、人間を愛し
愛しすぎて彼らの願いを叶えるために神となり
彼らから目を向けられなくなったら
祟り神に堕ちてしまい、しかし呪うことさえできずに彷徨うほどの。


「なんでなの…?」


双子も懐いているし
あまり顔には出さないが、穂高も絶対的な信頼を置いている。
そんな彼のどこが憎らしいのか。


「あいつは、あいつは…!」


そう言って朽葉がさらに恐ろしい顔になった時
こんこん、とドアがノックされた。


しかし、朽葉は構わずに、続ける。
朽葉は結界を張っていて、
夜中の回診の時も、看護師は二人の様子には気づかず
手前に用意された幻術の伊良の様子を伺っては帰っていった。


そして、朝になった今も
その結界は続いている。
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