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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界
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居る。
志摩は双子を宿に戻している間中
伊良の痕跡を少しでも見つけるために
耳と鼻をそばだてていた。
結界の中からの詮索は難しく
とてつもなく繊細な作業だった。
加えて、穂高が人間の状態である今
宿の結界を強化し、調節しなければならず
志摩は小一時間もすると
ひ額からびっしりと汗を垂らすことになった。
陽が完全に落ちる頃になると
近江の方が戻ってきた。
「志摩様、何をなさってるんですか!」
近江はすぐに志摩のしていることを察知し
やめさせようとした。
しかし、その彼を制止し、「もう少しさせてくれ」と
志摩はいつになく真剣に言う。
「ですが…志摩様お一人では…体がもちませんよ」
「大丈夫だ。
後で、近江。少し代わってくれ。
その間に宿に戻って、湯に入る」
わかりました、と近江は承知し
伊良の詮索を手伝うために神通力を解放する。
「穂高は、どうだった?」
近江力が加わったことで、少しだけ志摩に余裕ができる。
「驚愕なされていました。
志摩の結界に隙間があるはずがないと。
何者かが、邪なことをしたに違いないとおっしゃっていました」
その意見に志摩は同意して頷く。
決して自分の力を過信するわけではないが
これは、非常事態とも言えた。