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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界

「俺も、何か悪いことが起きてるように思う。
真っ当にやってきた俺たちでは気づかない
何か、別の視点から入り込んだ何かが、悪さをしているように思う。


愛蘭は、それに巻き込まれてしまった。
完全には人間ではないあいつが
こんなに長い時間彼方の世界にいれば
必ずどこかに歪みが生じる。


あいつの体も心配だが
その歪みさえできれば、見つけやすくもなる。


だけど…」


だけど。
先には行けない。
助けには行けない。


なぜなら、少しでも結界から出てしまうと
先ほどの吐き気よりももっと大きな苦痛が襲ってくる。
その力が存在してはいけない世界にいると
力の強いものほど、その世界からはじき出される反動が強くなるのだ。


先ほどは一瞬だったから吐き気で済んだが
全身が出ようものなら、天災が起きてしまう。
正規の手続きを踏むしかないが
それには様々な承認が必要で
それをしている時間は今の志摩には無かった。



(無事でいろ、愛蘭…)


夜が来る頃に一度志摩は宿へと戻り
宿中の調律を施して回った。
術は完璧で、どこにも隙間などない。
あの、伊良が抜けていったところを除いては。


一度湯船に浸かり
邪気を払って体を清める。
そうして、穂高の部屋へと向かったときには
すっかり夜になっていた。
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