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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界
朽葉は首を傾げ
長い下で崩れた顔を舐める。
その不気味さに一瞬だけ気を削がれるのだが
それでも尚、体の疼きが止められない。


「志摩は…あのくそ狐は…まあいい。
その女にはな、他の男に触れると
たまらなく発情する呪いをかけたんだ。
どんな奴とでも寝る、今なら快楽の奴隷だ。
そして、その呪いを解くのは、俺の肉棒をそいつに入れるしか方法はない」


「な…」


穂高は苦しむ伊良を見て、眉根を寄せた。


「伊良様になんてことするの。この泥棒蜥蜴!」


美濃が暴言を吐き捨て
朽葉をにらんだ。


「なんだ、この小娘。
まさか、お前の連れじゃないだろうな!」


穂高の沈黙が肯定だとわかると
朽葉は歯をむき出しにしてゲラゲラ笑い転げた。


「山の神ともあろうお方が
こんなちっちゃな妖連れてお出ましとは
随分俺も舐められたもんだな!」


最後は怒りをあらわにした時
「病院で騒がないでください!」
と怒鳴り声が聞こえて、警察官が駆けつけて来た。


「今のうちに!」
「逃すか!」

美濃がそう言うのと朽葉の声が重なる。
朽葉の放った太刀筋が突風となり
その風圧で窓ガラスが割れて
伊良を抱きしめたまま穂高も窓の外へと吹っ飛ばされた。


「いやあああああ!」


伊良は自分の悲鳴に驚きつつも声を出さずにはいられない。
ここは六階。
重力に引っ張られて地面が近くなる。


看護師たちの悲鳴が聞こえ
そして後から美濃が飛び降りて来る。
その後ろから、朽葉がひょい、と壁にくっついて
ペタペタと四つ足で追いかけて来た。


「美濃に掴まって、二人とも」


そう言うと美濃はふとお手玉をお取り出すと
ぷう、と息を吹きかけた。
お手玉は巨大化し
地面に落ちる寸前で三人を包み込んで衝撃を吸収した。
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