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姫巫女さまの夜伽噺
第11章 妖の世界
「伊良、しっかりして。
ついたら、楽にしてあげる。約束する。
君は、僕たちの宝だ。
だから、あんな奴の呪いになんて屈するな」
穂高の言葉に、伊良の瞳に少しだけ光が戻る。
唇をかみしめて、震えるように小さく頷いた。
「見えた、二人とも美濃につかまって!
せーので降りるから!」
「逃すものか…! 逃しはしないぞ!」
穂高は伊良にしっかり掴まるように首に腕を回させ
彼女を抱きしめながら、美濃と手を繋いだ。
「志摩様!」
美濃の声に、伊良がふと顔を上げる。
「…し、ま…」
穂高に抱きついたまま
ものすごいスピードで空を駆け抜ける赤べこの向かう先を見る。
ぐんぐんと山肌が近づき
そして、その山肌の一部の斜面。
岩肌が見えるその空間が、歪んで見えた。
そこに近づくにつれ
だんだんとその歪みが取れて来る。
そして、浅葱色の狩衣を着た
仏頂面の青年ーーー志摩が見えた。