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姫巫女さまの夜伽噺
第12章 夜伽噺の終わりに
「…常盤。覚えている。
だが、あいつは…」
志摩が言いかけたのを穂高が止めた。
「常盤は、確かに働いていた。
僕は、働く仲間を誰一人として忘れたことはないからね。
だけどね、朽葉。よく聞いてほしい。
志摩に惚れて、志摩に振り向いてもらいたくて困らせるために
仲間連中を傷つけたのは、常盤の方だ」
「うそだ!」
朽葉は吠える。
その目からは、恨みのこもった、真っ黒な涙が流れ出る。
「嘘じゃない。山の神代行の僕が誓ってもいい」
やんわり、だがはっきりと
穂高が威厳を持って言葉を発する。
すると、それは言霊となり
光を放って朽葉の頭上からひらひらと光って舞い降りた。
「常盤は優れた女性だったよ。
だけど、してはいけないことをしたんだ。
だから、山から追放した。
朽葉、それを、逆恨みと言うんだ。
今回のことは許すから、しばらくそこで、頭を冷やすといい」
穂高は哀れな朽葉にそう言い放つ。
絶対的権限を持つ者の、有無を言わせない声音。
朽葉はへなへなとしゃがみこみ
何かブツブツ言いながら虚ろな瞳から、光が消えた。
その瞬間、穂高が手に持っていた黒い塊が
突如発光し始める。
そして、ドロドロと溶け出し、地面に落ちて重々と焼け焦げて無くなった。