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姫巫女さまの夜伽噺
第1章 まよいまやかしその先に
愛蘭は駅へと向かうと
止まっていたタクシーを拾った。
時刻はすでに真夜中の2時。
タクシーの運転手が心配するのを聞かず
一時間ほどかかる山を指定した。


「お客さん、大丈夫ですか?
こんな夜中に、あんな山へ何しに?」


「実家があそこなんです。
兄が急病で倒れたって…」


感情のこもらない言い方に
運転手は逆に納得して
運転の速度を早めた。


山に近づくと
ポツポツと雨が降り出す。


本格的になってきて
ワイパーの音がうるさく感じるほどになる。


愛蘭は外を見つめたまま
じっと動かずにいた。


(死のう…)


もう、何も考えたくもなく
何も感じたくもなかった。
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