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姫巫女さまの夜伽噺
第1章 まよいまやかしその先に
本当に大丈夫かを心配する運転手に
愛蘭は空元気で答えて
中腹のバス停で降ろしてもらった。


吐く息は視界全てを白い靄で包むほどに冷たい。
ざあざあ降りの雨音が
むしろ心地よいくらいだった。


愛蘭はタクシーを見送ると
バス停を背にして山の中へ入って行った。


(ここなら、誰も来ない)


真っ暗な中、濡れた地面は滑りやすく
とぼとぼと道無き道を進むと
そのまま滑って転んだ。


「きゃっ…!」


斜面になっていたのに気づかず
愛蘭は文字通り転げ落ちた。


木の根に思い切り腹を打ち付けて
転がるのが止まったのはいいが
寒さに手と足の感覚はなくなり
口からは血と泥の味がした。
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