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愛DoLL☆美しき野獣
第17章 十七章


意識を取り戻すと、潤は車の中にいた。

肘鉄を食らわせた運転手は、幸い運転している。

両手は縄で拘束されているものの、足は自由が利いた。

隣には千秋が嬉しそうにこちらを見ている。

(全く、薄気味悪い野郎だ。まてよ、こいつさっきもふらついてたよな?それにエドワードよりひ弱そうだし。俺ひとりで凹れそうだな。その隙に逃げるか?)


潤は、寝たふりをして、チャンスを伺った。

車が信号待ちで停車する。

(今だ!!)

潤は、思い切り、千秋の股間を蹴り上げた。


「うおっ!?」


あまりの激痛に千秋は蹲った。

潤は、シートベルトを顎で外して、歯でドアのロックを外した。


「・・・逃がすな。早く車を出しなさい!!」


千秋が唸りながら、運転手に命令を下した。

その間に、車のドアを力いっぱい、蹴った。


ドカッ!!!と鈍い音が車内に響き渡り、次の瞬間、ドアが壊れ、潤は、BMWから飛び降りた。


ザザザザザツーーーーーっと、スーツが地面に擦れる。

背中と肩に大きな衝撃があった。


しかし彼は気にせずに、立ち上がり、走り出した。


「けっ、あばよホモ野郎。」


横断歩道から、狭いビルの間を縫って、走った。

電信柱の標札を見ると、原宿1丁目と書かれていた。
 
若者がうじゃうじゃいて、かえって千秋を巻き易い。

アイドル写真館の裏路地で、息をついた。

女子高生たちが、潤のことをジロジロ見ていたが、気にもしなかった。

さっき車に引き摺られた背中が燃える様に熱い。


「痛てぇ・・。」


こんな時に限って、携帯電話は、秘書に預けてある。


(響の容態も気になるし、携帯を持っておけば良かったな。)


「最悪だ。」


潤は、深いため息を吐き、そこから立ち上がろうとした。

その瞬間。

ある女子高生に目が行く。

女友達と仲良さそうに、アイドル写真を選んでいる肩くらいの髪の女の子。

リボンにチェックのスカートにブレザーの、制服姿。

潤が彼女のことを見間違えるはずがなかった。


「・・・真琴。」


潤は、目を見開いて、驚き、身体が一瞬で固まった。
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