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愛DoLL☆美しき野獣
第29章 波乱の幕開け



潤の最後の捨て台詞に、静の美しい顔がみるみるうちに、醜く歪んでいく。


「…潤…絶対に、許さない…」


小さく呟いた静の言葉に、真琴は、目を見開く。


(…お姉ちゃん…もしかして、まだ潤さんのこと…?)


もし、自分が生まれて来なければ、もしかしたら、潤さんと静は、結ばれていたのかもしれない…。


そう思い始めたら、真琴は、胸が張り裂けそうになった。


(…ごめんなさい…お姉ちゃん…償わさせてもらいたいのは、寧ろ、あたしの方だ…)


「…潤さんのこと、許してあげて…」


我が儘かもしれないけど…。

昔、駆け落ちまでした二人。

とても強く惹かれ合ったに違いない。

こうして、再び彼と再会したら、妹が婚約者の座に付いていて。

そして彼は、その妹に愛を囁くような捨て台詞を吐いて行って、一体、静がどんな気持ちになっているか、真琴には、わからなかった。

急に、怖くなった。

静の激情が…。

一体、彼女の怒りは、どこに向かっていくのだろう…?


「真琴には、まだ婚約は、早すぎるわ!!!世の中には、たくさん良い男がいるのよ?易々と自分の未来を決めてしまっては、ダメ!!!」


「………」


(…全然、答えになってないよ、お姉ちゃん。そう易々とは、許してはくれないんだね…)


真琴は、次々と溢れてくる涙を拭った。


「あたしは、二人が必要なの!!!」


そう言うと、静は、頭ごなしに怒鳴り散らした。


「真琴には、わたしがいるじゃない?あんな男たちの事は、忘れなさい!!」


「…そんなこと、出来ないよ!!!」


「わたしが、忘れさせてあげるわ!!!」


「…でも!!!」


静は、憐れみを含んだ瞳で真琴を見つめ、真琴の額に右手を当てた。


「あの二人に対しての想いは、もしかしたら、真琴は、Doll 時代の後遺症が残ってるのかもしれないわ!!!病院に行きましょう!!!」


「「!?」」


「…ああ、きっと、そうね…可哀想な、わたしの真琴…」


静は、何を言っても聞き耳をもたず…。


そして、自分は、再び二人の元に戻れるのか、とても不安になった。


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