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身代わりの夜
第9章 盗み聞きオフィス
 今日の午後、課長と山野辺はキャンペーン企画の打ち合せで広告代理店に出向いていた。
 直帰すると夕方に連絡があったから、二人で夜の街に繰り出したのだと思った。

 それを途中で切り上げ、忘れた書類を取りに会社に戻ってきたらしい。

「ありました。ありました。
 わざわざついてきてくれて、ありがとうございます」

「これも課長の仕事のうちだから。
 それより、資料の内容は大丈夫なのね。ちょっと見せてごらんなさい」

 書類をすばやく繰る音がした。

「まあまあかな。最初にしてはよくできている……
 きゃっ、な、なに?」

 突然の色っぽい悲鳴に、啓太も丸めた背中をびくっと震わせた。

「ほら、契約が成功したら、課長とホテルに行く約束だったじゃないですか」

「……そ、そんな約束、したかしら」

「しましたよ。ぼく、今日はそのつもりでしたから」

「だからって、ここでしなくても……
 あ、山野辺くん、だめっ。や、やめなさい……んっ、ぅんんっ」
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