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身代わりの夜
第9章 盗み聞きオフィス

山野辺が亜沙子に抱きつき、キスを迫っているようだった。
同僚の暴挙に、思わずデスクの下から飛び出しそうになる。
それを押しとどめたのは、山野辺が口にした「ホテルに行く約束」という台詞であった。
(いつの間にそんな関係に……)
あの日以来、ふたりがあやしげな雰囲気になっていることは、うすうす察していた。
いまだに亜沙子は、マンションに送っていったのが山野辺だと信じているみたいだ。
大人の男女なのだから、自由にすればいいと思っていても、どうしても心穏やかではいられない。
とくに、山野辺が陰で〈ヤリチン〉とすら言われていることを思えば、亜沙子と深い仲になって欲しくなかった。
そんな啓太の願いを無視して、唇を重ね合わせる濡れ音が聞こえはじめる。
「夜のオフィスって、すごく昂奮しませんか……
ああ、課長。この前の夜が忘れられません。
貴野課長があんなに乱れるなんて。ぼく、びっくりしました」
「あれは酔っぱらってて……
ごめんなさい。よく覚えてないの」
「ぼくも今、酔ってます。
だから、今日も酔ってのアクシデントってことに……」
同僚の調子のいい言葉に、啓太はきりきりと歯ぎしりするしかなかった。
こうして二人の蜜戯がはじまったのである。
同僚の暴挙に、思わずデスクの下から飛び出しそうになる。
それを押しとどめたのは、山野辺が口にした「ホテルに行く約束」という台詞であった。
(いつの間にそんな関係に……)
あの日以来、ふたりがあやしげな雰囲気になっていることは、うすうす察していた。
いまだに亜沙子は、マンションに送っていったのが山野辺だと信じているみたいだ。
大人の男女なのだから、自由にすればいいと思っていても、どうしても心穏やかではいられない。
とくに、山野辺が陰で〈ヤリチン〉とすら言われていることを思えば、亜沙子と深い仲になって欲しくなかった。
そんな啓太の願いを無視して、唇を重ね合わせる濡れ音が聞こえはじめる。
「夜のオフィスって、すごく昂奮しませんか……
ああ、課長。この前の夜が忘れられません。
貴野課長があんなに乱れるなんて。ぼく、びっくりしました」
「あれは酔っぱらってて……
ごめんなさい。よく覚えてないの」
「ぼくも今、酔ってます。
だから、今日も酔ってのアクシデントってことに……」
同僚の調子のいい言葉に、啓太はきりきりと歯ぎしりするしかなかった。
こうして二人の蜜戯がはじまったのである。

