この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
身代わりの夜
第9章 盗み聞きオフィス

衣擦れの音と共に、山野辺の昂奮した声が聞こえた。
「か、課長、すごくセクシーな下着じゃないですか。
やっぱり、今日は課長もそのつもりで」
「違うの。そんなつもりじゃなくて、たまたま……」
「ふふっ、照れるなんて可愛いです……ぅむっ」
唇が触れ合うかすかな濡れ音に、男女の吐息が重なる。
亜沙子が本気で嫌がっているとは思えなかった。
口調の端々に潜む、どこか男に媚びるニュアンス。
啓太の胸は激しく痛む。
これ以上、聞いていられなかった。
息を殺してデスクの下を這い出した。
四つん這いで椅子やサイドキャビネットに身を隠し、そろりそろりとドアに向かう。
背中に二人の戯れを聞きながら、なんとかフロアの出入り口にたどり着いた。
幸いなことに、その辺りは照明が消えて薄暗い。
振り向くと、山野辺は亜沙子の服を脱がせるのに夢中だ。
啓太は細心の注意をはらってドアノブを回していった。

