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身代わりの夜
第9章 盗み聞きオフィス
 一瞬、互いに見つめ合う。

「あ、あの……ぼくは何も見てな……」

「おおっ、ちょうどよかった」

 うろたえる啓太の前に来て、腕を掴んで立たせた。

「な、頼むよ。
 ちょっとの間でいいから、課長の相手をしてて欲しいんだ」

「はああ?」

 困惑する啓太をよそに、山野辺は自分の都合をまくしたてる。

「おれさ、事務所で貴野課長と、その、ちょっとエッチをはじめちゃってさ……
 それはいいんだけど、急に梨華ちゃんのところに行かなきゃならなくなったんだよ」

「加納さんが……」

 啓太がドタキャンしたので、急遽デートに誘ったのだろうか。
 梨華ははっきり口にしなかったが、山野辺とは別れたものと思っていたのだが。

「なーんかヤバイ雰囲気なんだよな。
 でさ。悪いけど帰ってくるまで、おれの振りをして、課長のエッチの相手をしててくれないかな」

「なっ」

 啓太はぶるぶると首を振った。

「で、できるわけないだろっ」
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