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身代わりの夜
第10章 純情エッチ代行人
 細い鼻孔がヒクヒクとうごめいた。
 まるで啓太を誘ってでもいるようだった。

 我慢できずに、指先を鼻筋に移動させる。
 ツンと尖った鼻の頭から上品な小鼻へと、愛でるようになぞり上げた。

 亜沙子は顔をそむけなかった。
 肩を小さくすくめて、男の指が触るに任せている。

「ね、ねえ……何か言ってよ」

 いつまでも無言の相手に対して、不安そうに声をかけてくる。

 啓太は声を出すことができなかった。
 何かに取り憑かれて、指で唇の形状をなぞり、シャープな顎の輪郭をたどりつづける。

「もう。目が見えないのをいいことに、悪戯なんかして」

 肉の薄い亜沙子の頬に赤味がさした。
 もとからアルコールで火照っていたのが、さらにピンクに染まる。

 黒いブラジャーに包まれた胸の起伏が大きくなる。
 口元が細かく震えていた。

 その口が小さく尖り、啓太の指に、ちゅっとキスをしてきた。
 びっくりして啓太が指を引っ込めるより早く、ぱくりと咥えられた。

「ふぅうんっ……」

 悩ましい鼻声と共に強く吸引され、口中でちろちろと舐められる。
 ぬるっとした舌の感触がたまらなかった。

 すぐに指を離して、妖しい笑みを浮かべる。

「ふふっ。山野辺くんの指、しょっぱい」
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