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身代わりの夜
第12章 ふとどき社内エッチ
 あの夜、部下の情欲をたっぷりと注ぎ込まれた亜沙子は、デスクに上半身を突っ伏して、しばらく軽い失神に陥ってしまった。

 無我夢中で憧れの女課長を抱いた啓太だが、頭に昇った血が冷めると、自分のした行為の結果に呆然となった。
 ズボンを直し、脱がした衣服を持ってきて、肩にかけてあげた。照明を消したのは、少しでも亜沙子の羞恥を和らげようとしてのことだ。

 いくらもしないうちに、亜沙子は意識を取り戻した。

 アイマスクをはずし、いきなり啓太の頬を平手打ちにした。
 暗闇に乾いた鋭い音が響いた。

 ショーツとストッキングを引き上げ、胸を抱えて無言でオフィスを飛び出す。
 女子トイレのドアが閉まる音が聞こえた。

 どんな顔で上司と対面すればいいのか、啓太が思い悩んでいると、山野辺がエレベーターホールから間の抜けた顔をのぞかせた。
 どうやら、オフィスの様子をうかがっていたらしい。

「よう、どうなった?」

 心配そうに尋ねる山野辺に、啓太は、

「ばれてないと思うよ」

 とだけ言って、これ幸いと、早々に引き揚げた。

 後で聞くと、貴野課長の方も「今日のことは、誰にも内緒よ」と念を押し、すぐに帰ってしまったとのこと。

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