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身代わりの夜
第12章 ふとどき社内エッチ
 次の日、梨華は山野辺と正式に別れたと教えてくれた。

 啓太のメールを受け取った後、急に思いたったらしい。
 今すぐ来ないと、愛娘に手を出していたことを佐藤専務にばらす。
 そう脅して呼びつけたのだと、梨華はチロッと舌を出した。

 梨華が専務のお気に入りなのは周知の事実である。
 身勝手な男への、せめてもの意趣返し。
 山野辺が大慌てで事務所を飛び出したのも無理はない。

 梨華は別れを告げると、さっさと席を立ったという。
 山野辺の戻りがやけに早かったのには、そんな事情もあったのだ。

 初体験以来、梨華とは何度かベッドを共にした。
 啓太の仕事が山場を迎えて、なかなか時間がとれず、会えばただちにホテルに直行する。
 山野辺と別れても、啓太とは欲望を充たすだけの関係だと念をおされていた。

(梨華さん、最近、やけに激しいんだよな)

 さっき、役員会議の資料を届けに来た梨華が、啓太に向けた意味ありげな視線を思い出す。
 なんだか自分が悪いことをしているような気になった。

 メールが届いた。梨華からだった。

 ――昼休みに会議室で待ってる。

 社内で連絡してくるなんて初めてである。

(なんだろう?)

 啓太は首を傾げた。



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