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身代わりの夜
第13章 出張夜の部下指導
その時、会場の奥で声がした。
「あっ、村木さーん。
いつもお世話になっています」
山野辺が小走りにやって来るのを待たずに、村木は啓太にウインクし、手を振って会場を去って行った。
山野辺は後ろ姿を見送りながら、
「あれえ。村木さん、どうしたんだろう」
啓太は溜めていた息を、ふうーっと吐いた。
おそるおそる亜沙子に眼をやると、目元を染めて、こちらをにらんでいた。
啓太はあたふたしながら、
「あ、あの……失礼な奴でしたね。
課長のプライベートなことまで」
亜沙子はハッとして、啓太の視線を逃れるようにそっぽを向いた。
目元から頬にかけて、さらに強く血の色が浮かんだ。
「そんなことはどうでもいいから、ちゃんと仕事に集中しなさい。
古森くんこそ、さっきの言い方、大切なお客様に失礼だったわよ」
小声ながらも、きつい口調で早口に言われた。
確かに亜沙子の言うとおりだ。
大事なイベントの最中である。
啓太は気を引き締め、来客に向けて明るい笑顔を振りまいた。
* * *
「あっ、村木さーん。
いつもお世話になっています」
山野辺が小走りにやって来るのを待たずに、村木は啓太にウインクし、手を振って会場を去って行った。
山野辺は後ろ姿を見送りながら、
「あれえ。村木さん、どうしたんだろう」
啓太は溜めていた息を、ふうーっと吐いた。
おそるおそる亜沙子に眼をやると、目元を染めて、こちらをにらんでいた。
啓太はあたふたしながら、
「あ、あの……失礼な奴でしたね。
課長のプライベートなことまで」
亜沙子はハッとして、啓太の視線を逃れるようにそっぽを向いた。
目元から頬にかけて、さらに強く血の色が浮かんだ。
「そんなことはどうでもいいから、ちゃんと仕事に集中しなさい。
古森くんこそ、さっきの言い方、大切なお客様に失礼だったわよ」
小声ながらも、きつい口調で早口に言われた。
確かに亜沙子の言うとおりだ。
大事なイベントの最中である。
啓太は気を引き締め、来客に向けて明るい笑顔を振りまいた。
* * *