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身代わりの夜
第13章 出張夜の部下指導
「な、なんだよ。急に」

 いつもと雰囲気の違う啓太の態度に、山野辺は怪訝な顔をする。
 啓太が何を言っているのか、即座には分からなかったようだ。

「都合のいい時ばかり、代役をさせられるのは、もうまっぴらだってことさ。
 課長がエッチしたいっていうなら、ぼくが相手をする。
 山野辺は部屋に戻って寝ていろ」

「おいおい、冗談言うなって。
 課長がOKするわけないじゃないか」

 だが、啓太は譲らなかった。
 同僚をにらんで、

「課長に正直に言うからな。
 オフィスでのエッチの最中に、カノジョに逢うために、ぼくに身代りを押しつけたって」

「ま、待てよ」

 山野辺が焦った声を出す。
 前回と立場が逆転した感じだった。

 ホテルの廊下でにらみ合う。

 薄暗い照明に浮かんだ山野辺の顔は不満そうだ。
 ずっと便利に使ってきた同僚のいきなりの反抗に、戸惑いと苛立ちを隠せないでいる。

 ややあって、山野辺は頭をかきながら苦笑いをした。

「まいったな……お前、課長に惚れてるのか?」

「……そんなんじゃない」

 啓太は頭の芯が熱くなるのを覚えた。

(そう、そんなんじゃない)

 胸の裡で繰り返す。
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