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身代わりの夜
第2章 泥酔美人上司
 独身女性の部屋に入るのは生まれて初めてだ。
 憧れの美人上司のプレイベートな空間かと思うと、なおさらどきどきする。

 二人掛けのソファの正面に、大画面の液晶テレビと並んで、オーディオ機器を置いたカラーボックスがあった。
 ボックスの下段にはCDやDVD、それにファッション誌などが雑然と積まれている。

 明るい色のカーテンが引かれているのは、ベランダに出るガラス窓のようだ。
 その横にあるドアが、おそらく寝室への入り口だろう。

 キッチンスペースには細長い食器棚と冷蔵庫。
 小さなダイニングテーブルに、カップ鉢に活けられたミニ観葉植物が、小さな葉を拡げていた。

(ここに入った男って、ぼくが初めて……
 ……なわけ、ないよな)

 ダイニングテーブルには椅子が一脚だけ。
 亜沙子がそこで誰かと朝食をとっているシーンは想像しがたい。

 とは言え、魅力的な三十代の女性である。
 過去に素敵な男性とつき合ってきたに決まっていた。

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