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身代わりの夜
第16章 おわかれエクスタシー
 啓太に貫かれている間、無我夢中で貴野課長への嫉妬も忘れていた。
 啓太に与えられる肉悦のこと以外、何も考えられなかった。

 それほどに、情熱のすべてをぶつけてくれたのは、きっと梨華を哀しませまいとしてのことだ。

 今も嫉妬がないわけではない。
 けれど、それよりも、深い満足感があった。

(啓太をここまで成長させたのは、わたし。
 そして、啓太のおかげで、わたしだって成長できた……はずよね)

 性技や体位の話ではない。
 啓太の一途さを知り、優しさに触れて、女としても、人間としても、たしかな成長を遂げられた実感があった。

 ならば、年上の女として、嫉妬するよりもやることがあるはずだ。

 啓太の髪に指を絡ませる。
 愛情をこめて梳き上げた。

「今度のプロジェクトが終わったら、亜沙子さんにちゃんと告白するのよ」

 はっと啓太が顔を上げた。
 どうしてこんな時に、とでも尋ねるように、こちらの瞳をのぞき込む。

「自分の思いを、きちんと告げなくちゃだめ。約束して」
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