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身代わりの夜
第17章 強引純情部下
* * *
亜沙子はパソコンから顔を上げ、時計を見た。
夜十時を回っていた。
村木の申し出を受け入れるのなら、そろそろ退社しなくてはならない。
他にフロアにいるのは古森啓太だけである。
社内会議の報告書作成がまだ終わらないようだ。
他の課員たちは明日デパートで行われるイベントの会場設置のために出かけていた。
さっき、準備が整って直帰するとの連絡があった。
――権堂部長と一晩つき合ってくれたら、今回のミスはなかったことにする。
それがマカベ側が提示してきた条件だった。
指定されたのは外資系の一流ホテル。
どういう内容の接待なのか、言われなくてもわかった。
脂ぎった中年部長の肉欲の対象になることもそうだが、それが他ならぬ村木の指示だということが、屈辱感を増幅させる。
今後、この仕事を続けるかぎり、彼の見下したような薄笑いがつきまうだろう。
(でも……行くしかないのよね)
今回のプロジェクトが失敗したら、自分には未来がない。
わずかな時間、我慢すればすむのであれば、提案にのらない道理はなかった。