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身代わりの夜
第17章 強引純情部下
 横目を啓太に向ける。
 黙々とデスクに向う姿に、胸の奥がきりきり痛んだ。

 ここのところの彼の仕事ぶりは見違えるようだった。

 頼んだ資料は、時間はかかっても、わかりやすく正確にまとめ上げる。
 細かな点を指示しなくとも、亜沙子の意図を把握して、データの裏付けもしっかりとる。
 キャンペーンでは、めんどうな裏方仕事も進んでやってくれた。

 いつの間にか、最も信頼できる部下に成長していた。

 けれど、彼のことが気にかかるのは、それが理由ではない。

(わたし……きみのことが)

 自分に向けられる熱い眼差しには気がついていた。
 正直、わずらわしかった。

 気持ちに変化が生じたのは、村木の露骨な嫌がらせに毅然とした態度をとってくれてから。
 以来、啓太の挙動が気になってしかたがない。
 彼に見つめられていると思うと、心臓が高鳴り、身体の芯が妖しく火照った。

 いったん意識すると、それ以前に古森に妙に冷たくしていたのも、実は好意の裏返しではなかったかと思えてくる。

 それに比例して、山野辺への感情はすっかり醒めてしまった。
 仕事での手抜きも目立つ。
 今回の窮地でも、言い訳ばかりする態度に嫌気がさした。

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