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身代わりの夜
第17章 強引純情部下
 亜沙子は力なく微笑んだ。

「ありがとう。
 でも確実にするのは課長としてのつとめなの」

「違います。
 貴野課長はぼくたちを信頼してないんだ」

 啓太が亜沙子の手を取った。
 いつもの小心な男とも思えない大胆な行動だった。

「課長っ……ぼくは課長のことを……」

「ちょ、ちょっと、古森くん。な、なに……んっ」

 抱きしめられた。
 唇を奪われる。

 熱のこもった一途な口づけに、頑なな心が甘く溶けていきそうになった。
 だが、ここで感情に身を任せるわけにはいかない。

 全力でキスを振りほどく。

「上司になんてことするの」

 わざと冷たい声を出した。

「いいこと、二度としないで。今のことは忘れるから」

 言い捨ててオフィスを出ようとした。
 哀しそうな部下の顔を見ていられなかった。

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