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身代わりの夜
第5章 同僚の恋人と
「いっそ、佐藤専務に言いつけてやればいいじゃないですか」

 つい、そんなことを口走ってしまう。
 梨華が専務のお気に入りだというのは、よく知られていた。

「やめてよ。自分がみじめになるだけだし、
 専務にも嫌な思いをさせるじゃないの」

「それにしても許せないですよ。二股かける奴なんて」

 吐き捨てるような口調に、梨華がちょっと笑った。

「あら、経験でもあるような口ぶりね」

「高校生の時に……いや、やめときます。
 嫌な思い出だから」

「なによ。気になるじゃない。
 話しかけてやめるなんて、よくないわよ。
 わたしだって、正直に言ったんだから、古森くんも白状しちゃいなさい」

 問い詰められて仕方なく、誰にも語ったことのない苦い思い出を告白する。
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