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女社長 飯谷菜緒子
第11章 禁断
翔也には感謝している。まるで生き写しのような分身を遺してふたりの想いを遂げたのだ。
それに、ずっと菜緒子を想い続けてくれていた。
だからどことなく菜緒子に似ている女性を妻にしたのであろう。

本当に申し訳なさそうな顔をしている雪雄を見て翔也もこんな顔をしていたのかと思う。
生真面目な翔也のことだから、妻を抱く度に菜緒子でない女性を抱くことと、叶わぬ恋となった菜緒子の身代りにしてしまった妻に心の中で懺悔をしていたに違いない。

ただ、妻のことは愛し大事にしていたのだろう。あの妻の幸せそうな様子や、良い家庭環境で培われたであろう雪雄の人柄を見れば分かる。

その点は少し妬けるが、妬く資格もないようなことをしてきた自分のことを思い出すと何だか可笑しくもなる。

「あの娘とはもう夫婦の約束をしたのですか?」

菜緒子の問いに雪雄は頷く。

「そう、よかった。この事はあの娘には死ぬまで秘密にしなけるばなりませんね」

雪雄はまた頷く。

「ごめんなさいね。義母だというのに節操もない愚かな女で・・」

「御自分のことをそんなふうにおっしゃるのはおやめください。私はあなたを愛しています」

そう言って雪雄はまた菜緒子を抱きしめた。

雪雄と光莉の婚姻の準備は着々と続いていた。
そんな中、光莉の目を盗んで菜緒子と雪雄は何回か関係を結んだ。

雪雄に抱かれる度に菜緒子は思う。
最愛の娘の婚約者とこのようなことを致しては必ず地獄に墜ちると。自分のような女は地獄に墜ちるのが当然だが、雪雄だけは助けて欲しいと菜緒子は神に祈っていた。

そして雪雄と光莉の結婚式は盛大に執り行われた。
幸せそうなふたりの顔を見ていると菜緒子も幸せな気持ちになっていた。

「おめでとう。よかったわね」と志乃が菜緒子の席に来てくれた。

「ありがとう」とふたりは盃を重ねた。

そういえば志乃とはしばらくだった。
式の後、戦友の親友同士で久しぶりに飲むという口実でふたりは出かけた。

「菜緒子、何だかまたキレイになったみたい」

と志乃は裸になった菜緒子を見て言った。

「また新しい男でもできた?」

流石は鋭い。いくら志乃だとはいえ、まさか娘の夫と関係しているなど絶対に秘密にしなければならない。

「そんなことはない。何やら忙しくて久しぶりだからそう思うんだろう」て菜緒子は裸の志乃を抱き寄せた。
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