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女社長 飯谷菜緒子
第4章 初体験
それは全く予想もできない不意打ちで、一瞬の出来事だった。
しかし、スローモーションのように、一時停止のようにキスシーンは長く続いた。

「し、志乃・・何を」

唇が離れた瞬間にそう言うのがやっとだった。

「先生よりも好きな人ってあなたよ。誰よりも気丈で逞しくて、優しくて、あなたが本当に男だったら好きになっちゃうのにとずっと思っていたの」

高校生になってからも男勝りなところは変わらないが、まさか志乃がそんなふうに思ってたとは・・菜緒子は呆然とした。

「でも、女だっていいの。あなたが好き」

志乃は涙を流して再び菜緒子の胸に顔を埋めた。

「お願い、抱いて。一度に二度も失恋するなんてイヤ。大好きな先生が実は婚約してるし最愛の人がいたっていうバカで憐れな女を慰めてくれるだけでもいいから、抱いていて」

志乃は菜緒子の胸の中で泣きじゃくる。

「自分のことをそんなふうに言うな。お前はバカでも愚かでもない、一途に人を愛することができる可愛くてステキな女性だ」

気がつくと今度は菜緒子が志乃の唇を奪っていた。なんでそんなことをしてしまったのか自分でもよく分からないが、たまらなく志乃のことが愛しかった。菜緒子は志乃と舌を絡ませる。

だが、重大なことに気づいた。結婚という女の人生にとって一大事さえも枕営業にしてしまうような汚い自分が志乃のように一途で可愛くて美しい女性を愛する資格なんてない。

「す、すまない。あたしは結婚さえも策略に利用するような汚くて卑劣な女だ。お前のようなキレイで汚れを知らない女を愛する資格などなかった」

「菜緒子こそ自分のことをそんなふうに言わないで。わたしが愛する人を卑下するようなことはやめて」

志乃は泣きながら怒ったように悲しそうに言って菜緒子が離した唇を追いかけてまた舌を絡ませた。

「し、志乃・・本当にあたしなんかでいいのか?」

菜緒子は志乃の唇を話すとじっと志乃の瞳を見つめた。志乃も菜緒子の瞳をじっと見つめて答えた。

「お願い、抱いて。あなたの愛が欲しい」

帰りは志乃の家に寄った。父親は単身赴任、母親は看護士で夜勤が多い、一人娘という環境から志乃は家ではぼっちで過ごすことも多い。

理系女の志乃の部屋にはいろいろな科学や理科の本や実験道具があって、女のコの部屋というよりは理科室みたいである。
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