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女社長 飯谷菜緒子
第10章 志乃と景嗣
景嗣とその妻は完全な仮面夫婦で、結婚してから今に至るまで夫婦の営みは一切ない。

そんな生活が10年余り続いていたのだが、妻に子供がデキた。遊んでいる他の男との子供だ。
妻は悪びれることもなく、開き直ってというよりも当然のような顔をして景嗣との間にデキた子供ということにして出産すると言い放ったらしい。

「よかったじゃない、後継ぎがデキて」と高笑いをしていたというのだ。

志乃と密会をした時に景嗣は涙を浮かべながらこの話を打ち明けたとのことだ。

「わたしにはどうすることもできなかった。ただ一緒に泣いてあげることしか・・」と志乃はまた涙を流す。

菜緒子は志乃をギュっと抱きしめた。抱きしめながら涙が流れてくる。怒りや悔しさから流れてくる涙だ。
こんな時に志乃になんと言葉をかけたらいいのか全く浮かばない。相手の酷い女のところに行って張り倒
してやりたいがそういうわけにもいかない。

「すまんな。何と言ってあげれば良いのか分からぬ」

「なんかこうされてると安心する。抱いて・・」

菜緒子と志乃は激しく唇を絡め合う。初めて志乃を抱いた時のように涙の味がするキスだ。そしてそのままベッドに倒れこんで激しく抱き合った。

「ごめんなさいね、こんな話をしてしまって。でも、菜緒子な聞いてもらって少しすっきりした」

事が終わって裸で菜緒子と添い寝をしながら志乃は瞳を潤ませる。

菜緒子はふと考えていた。確か景嗣の妻の実家が経営する会社はミツバの傘下の大手だったはず。その辺を上手く使えば龍二なら何とかなるかも知れない。

「ところで、その悪妻が不倫をしている証拠のようなものはないか?」と菜緒子は訊いてみる。

「実は、景嗣さんの力になれればと思ってこっそり悪妻を見張ってみたの・・」

志乃のスマホには景嗣の妻が他の男とラブホテルに入るところ、出てきたところの写真が撮りためてあった。男は何人かいるが、頻繁に情事をするのは3人である。

「この3人のうちの誰かが父親だな・・。まったく、何で避妊をしなくてそんなことをするかな。ちゃんと避妊してればそんなことには・・」と菜緒子が怒りを露にすると志乃はクスクスと笑った。

「菜緒子ったら怒るピントがズレてるよ」

志乃にツッコミを入れられて菜緒子は顔を赤くする。
自分は三葉信彦や出雲龍二と事を致す時にはきちんと避妊をさせている。

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