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女社長 飯谷菜緒子
第11章 禁断
禁断の愛の代償なのか菜緒子は次々と大切な人を失った。

何かと菜緒子の後ろ楯になってくれた三葉信彦も高齢のため亡くなった。ある意味天寿を全うしたともいえる。

信彦の葬儀で菜緒子は初めて妻の姿を見た。
その雰囲気に菜緒子は自分と似たものを感じて、なる程、良く似ていると感心した。

信彦の妻は菜緒子に近づいてきて、弔問客のいない離れのような所に誘った。

「あなたが菜緒子さんね。なる程、私とよく似ていること」と妻は笑みを浮かべた。

先方も自分と同じことを感じているのかと少し嬉しく少し緊迫する。

「あの人とあなたとのことは存知ております」

夫の不倫相手を目の前にしているというのに妻はとても穏やかだ。いや、この穏やかさの裏には憎悪や怒りが隠れているのかも知れない。

「申し訳ないことを致しました」と菜緒子は深々と頭を下げた。

この場合、下手に弁明したり誤魔化したりするよりはきっぱりと謝った方がいいと直感的に思ったのだ。

「謝らないでください。あなたには感謝しているんですから」

菜緒子が初めて信彦に抱かれた時、自分には種がないから妻との間の子は自分の子ではないと打ち明けられた。

菜緒子は妻が信彦が自分に種がないことを知って傷つかないように他の男との子を作るという禁断の手段に出たのではないかと感じて信彦に進言した。

「あなたのおかげで私たちは本当の家族になれたのです」

妻は深々と頭を下げた。

「あのとおり女癖の悪い人でしたが、あなたのことは本当に大切に思っていたようで、きちんと話もしてくれました。私たち家族を救ってくれたことを聞かされた時からずっとお会いしたいと思っていたんですよ」

何だか複雑な気持ちだった。いくら距離を置いて関係が冷えていた夫婦と子供の距離を縮めて関係を修復するきっかけを作ったとはいえ、夫の不倫相手を許して関係を認めることができるものなのか・・。

もし翔也が見つかったとして他の女と結婚でもしていたら自分はその女や翔也を許すことができるのだろうか。そうなるのが怖いからか懸命に翔也を探しながら心のどこかで見つからなければいいと思っていた。


翔也の行方は依然として見つからないままであった。翔也の捜索を依頼していた弁護士の龍二とはしばらく連絡が取れなくなっていた。

少しヤバい事件に手を出すと言ってから連絡が取れないままだ。
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