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女社長 飯谷菜緒子
第11章 禁断
いい歳をしてそんなに溜まっていたのかと思うと恥ずかしくなるが、何でこんな夢を見たのかと思う。

「龍二、まさかそなたは本当に・・」

何だか龍二の魂が別れを告げに来たような気がする。そして、その予感のとおり龍二に会うことはなかった。

悪いことは続き、菜緒子の夫である真次もまた亡くなった。

腹上死・・男色の真次が最近特に寵愛していた若いイケメンと事を致してそのまま急死したのだ。

「奥様、このようなことになってしまって申し訳ありません」

イケメンは涙を浮かべて深々と頭を下げた。

「あの人は幸せに死んでいったんだと思います。ありがとうね。あなたにとってはとんだ災難だったでしょうけど」

愛する相手と交わりながら死んでいく。本当に幸せな死に方だと思う。

「災難だなんて・・奥様の前で申し訳ありませんが、最後に私を選んでいただいて幸せでございます」

「申し訳ないだなんて考える必要はありません」と言って菜緒子は真次の顔を見る。

本当に安らかに幸せそうに眠っている夫の顔を見て菜緒子も安らかな顔になる。

「私ではこんな幸せそうな眠りは与えてあげられなかった・・この人は本当にあなたのことを愛していたんですね」と菜緒子は優しい眼差しでイケメンのことを見た。

「皆、あたしを置いていなくなってしまうんだな」

夫真次の遺品を整理しながら菜緒子はポツリと呟いた。人が亡くなった時というのは葬儀が終わるぐらいまでは全く実感できないものだ。
葬儀の段取り等で忙しく慌ただしいし気が張っているからだ。菜緒子のように大会社の社長という立場ならなおさらだ。

それが遺品を整理して次々と故人の物が片付けられていくに連れて本当に故人はいなくなったんだと実感が押し寄せてくる。

真次のパソコンを整理すると翔也や透真の行方を探っていたような資料が出てきた。しかも龍二に依頼をしていたようで、龍二からの報告資料もある。それは龍二が菜緒子に報告していた内容と全く違わぬものであるが・・

何故真次が翔也や透真のことをと驚愕したが、その答えはすぐに見つかった。

真次の日記、そこには懺悔の言葉のみが記されていた。

真次は菜緒子と翔也や透真のことを知っていた。
また、母親である寿子が菜緒子と真次を結ぶためにどんなに汚い手を使って亀井戸や敦賀を不幸に追いやったのかも知っていた。


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