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女社長 飯谷菜緒子
第11章 禁断
高校の先生だった時に景嗣があまりに無表情でいつも理科室で研究に没頭していることからアンドロイドと呼ばれていたのを懐かしく思い出す。
志乃がそんな景嗣を好きになったものだから、よくふたりでアンドロイドのいる理科室へ行ったものだ。

「研究して素晴らしい技術を提供してくれるのは嬉しいけど、もう面倒は御免だな」

菜緒子はかつて特許申請ができる程の製品を発表した時に、それは当社が開発していた物を盗んだとあらぬ言いがかりをつけられて苦労したことを思い出す。

「その点も大丈夫よ。いざとなったら知人の腕のいい弁護士さんを頼むんだって」と言う志乃の顔が段々と悪戯っぽい笑顔に変わっていく。

「だから、依頼するなら女性の弁護士さんにしてとお願いしておいたわ」

「どうして女性の弁護士さんなんだ?」

と少しとぼけて見せる菜緒子に志乃は抱きついた。

「もう、分かってるくせに。あなたがこれ以上他の人に抱かれるのはイヤ」と志乃は抱きしめる力を強くする。

ギュっと抱きついてくる志乃の胸の膨らみが当たり、喪服の首のところから項が覗く。
菜緒子も何だか興奮を抑えられなくなってきた。

「仕方のない女だな、喪服姿だというのに不謹慎な」

「自分だってわたしを求めているくせに」

ふたりは喪服姿のまま激しく愛し合うことになる。はだけていく喪服は背徳そのものでふたりの女芯に火を灯けていく。

「志乃」と菜緒子が不意に熱い視線で志乃を見つめる。

「なに?」志乃は艶やかな目で菜緒子の視線を受け入れる。

「お前はあたしの側からいなくならないでくれよ」

「わたしはずっと菜緒子の側にいるわ」

ふたりは激しく愛し合って眠りに堕ちていった。

志乃とはお互いにいなくならないと約束し合ったのだが、菜緒子は体調が思わしくないのを感じていた。時折胸の辺りが苦しく痛いのだが、少しすれば気のせいだったように何事もなかったように治まる。
また、激しく咳き込んで少し血を吐くこともある。

病院に行った方がいいとも思うが、何か深刻な病名を宣告されるのは嫌だから先送りにしていた。

「げほっ、げほっ」

まただ、嫌な咳が続いたと思ったら少しの血を吐いた。

「ふふっ、人間五十年か・・」

菜緒子はかの織田信長公が愛したという敦盛を舞ってみた。

「夢、幻の如くか」

愛し、愛された男たちが走馬灯のように駆け巡る。

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