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牝獣の哭く夜
第10章 砕け散る矜持
 殺意すらこもったような視線に、さすがの片桐もたじたじとなって、

「わかった、わかったよ。そうムキになるな。一度だけと約束しよう」

「それから」

 と、美貴は横目で沼田をにらんだ。

 片桐とは石になって耐える。しかし、沼田とだけは――

「沼田さんとは、とても無理です。耐えられません。片桐専務だけにしてください」

「そんな、殺生なっ」

 美貴の下腹部をいじくっていた指をとめて、抗議した。

「ここまできて、そりゃあないでしょう」

「むふふふ。君もずいぶんと嫌われたもんだねえ。さて、どうしたものかねえ」

 片桐は沼田にからかうような視線を向けた。

 美貴は天井から吊られた裸身がぐらぐら揺れるほど身悶えし、悲壮な表情で叫ぶ。

「沼田さんをこの部屋から出すこと。これは、絶対条件ですっ。
 そうじゃないと、この提案はなかったことにしてください。
 わたし、死に物狂いで抵抗しますよ。
 身体中に暴行の跡をつけて、警察に駆け込みますからねっ!」

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