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牝獣の哭く夜
第10章 砕け散る矜持
美貴は生まれたままの裸身をベッドに横たえた。
シーツに広がるセミロングのウェーブヘア。
ぴったりと閉じて伸ばした長い美脚。
両腕は胸の隆起を隠すように身体の前で交差させて、片桐が隣に寄り添うのを待つ。
ビデオカメラは撤去され、手足の拘束具も外された。
優美な裸身を戒めるものは、もう心の裡の葛藤しかなくなった。
美貴の渾身の訴えに、片桐専務が沼田をなんとか諦めさせた。
あまりの剣幕に、このままでは自分の分も危ういと判断したのだろう。
部屋を出ていくときの沼田の恨めしそうな眼が、まだ美貴の脳裏に焼きついている。
人形となって何も感じずに性の玩弄に耐えようと、あたらめて心に誓う。
男を受け入れても決して感じないし、相手を悦ばすような声も出さない。
せめてものプライドだ。
そのくらいの矜持は保っていたかった。