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牝獣の哭く夜
第11章 夜景レストラン
 けれどレストランに来てからは、仕事の話は一切しなかった。
 最新テクノロジーの話から、好きな芸能人や芸人、ファッションの流行まで。
 諏訪の話題は豊富で、ユーモアを交えて語る口調は、聞いていて楽しかった。

 諏訪龍彦と語っていると、美貴は心が落ち着くのを感じた。

 この人の前では、肩ひじを張らなくても済む。
 自分を無理やり大きく見せる必要もなければ、わざと卑下する必要もない。
 素直な自分が出せた。

「でも、東亜設計さんには、随分と恨まれているみたいで」

 美貴がそれとなく牽制すると、諏訪は眉をしかめ、

「東亜があなたに何か言ってきました?」

「……いえ、噂ですけど」

「気にすることはない。片桐専務には、他にも仕事を出しているんだ。
 もしなにか不快なことがあれば、僕に直接言ってください」

 諏訪は、改めて美貴に言った。

「沢村さんの才能は本物ですよ。僕が保証します」

「……うれしいですわ。そう言っていただけると」

 美貴は諏訪部長の眼を眩しそうに見つめて、口元をほころばせた。

 諏訪の言葉が胸に沁みて、先ほどとは違う理由で頬に血が上った。

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