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牝獣の哭く夜
第11章 夜景レストラン
 燕尾服を着たウェイターがテーブルの脇に立った。
 眉がくっきりとして、二重の大きな眼が垂れた、濃い顔つきのウェイターだった。

「サラダのおかわりは、もうよろしいでしょうか?」

 美貴は軽く首を振る。
 諏訪はからかうような眼でウェイターに、

「サラダ・フランソワはお薦めしないのかい?」

「は?」

「いや、なんでもない。ありがとう。もういいよ」

 けげんそうな顔のウェイターが去ると、美貴は眼を輝かせた。

「諏訪さんって、古いミュージカル映画がお好きなんですか?」

 諏訪は嬉しそうに驚いて、

「もしかして、サラダ・フランソワが分かりました?」

「『イースター・パレード』でウェイターが薦めるサラダですよね。
 わたしも大好きなんです。
 そういえば、今のひと、ちょっとあのウェイターに似ていたかも」

「ジュールス・マンシンです。
 大きな垂れ目がそっくりで、思わず笑いそうになった」

 諏訪は白い歯を見せた。
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