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牝獣の哭く夜
第13章 すえたる菊
「いやあっ。見ないでっ、お願い、見ないでええっ!」

 左右に割れた臀肉の谷間の底に、放射状になったセピア色の皺ひだが静かに息づいていた。
 リング状の括約筋が小穴の周囲にわずかに隆起し、短く細い毛がその周りにまばらに生えているのが淫靡だった。

 嫌い抜いた男に尻穴を見られる恥辱を想うと、胸が潰れるようだ。

「尻の穴を見られるって、最高に恥ずかしいよなあ。
 それも、俺みたいな豚男に。
 諏訪部長だったら、自分から開いて喜んで見せたのかなあ」

 美貴の尻越しに、諏訪の反応を確かめる。
 全裸の諏訪はこちらをにらんでいた。

 しかし、視線がちらちらと女の尻に移動しているのを、沼田は見逃さなかった。

 そんな諏訪の焦燥を暗く楽しみつつ、美貴の尻の狭間に団子鼻を近づける。
 美しく窄まった菊の蕾は、わずかに饐《す》えた匂いがした。

  戀びとよ
  すえた菊のにほひを嗅ぐやうに
  私は嗅ぐ お前のあやしい情熱を

 萩原朔太郎の「薄暮の部屋」の一節だ。

 沼田は小鼻を膨らませて、思いっきり息を吸いこんだ。
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