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牝獣の哭く夜
第2章 祝賀会の夜

 沼田と八木原は図面担当だった。

 課で練り上げたデザインを具体的に設計図面に起こす作業を行っている。

 二十八歳になる八木原は無口だが頼りになる存在で、設計センスも優れていた。
 課の打ち合わせでも、美貴がハッとするようなアイディアを何度も出してくる。
 それでいて、それを自慢げにするでもなく、黙々と図面の作成を行う。

 それに比べて沼田は、歳だけは一番上だが、課のお荷物的な存在だった。

 彼の出してくるアイディアは奇抜すぎて使い物にならず、作業もおそい。
 能力をカバーする熱意も見られなかった。

 おまけに、いつも粘っこい視線を胸や腰に投げてくる。

 美貴はいまでも最初に沼田と顔を合わせた時のことを思い出す。

 ネクタイに食べかすをつけただらしない格好で、美貴を小馬鹿にしたような、いやらしい愛想笑いを浮かべていた。

 こんな男を部下にするのかと思うと、虫唾が走った。
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