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牝獣の哭く夜
第2章 祝賀会の夜

 沼田はこの会社でずっと働いてきた生え抜きだった。

 外部からやってきて、いきなり課長となった女性の下につくことは、さぞかし面白くなかっただろう。

 美貴の指示を無視して、かってに図面を変更したことも、一度や二度ではない。
 そのたびに穏やかに叱責すると、沼田は鬱屈した表情を見せた。

 もっとも、今回のホテル・ソレムニティの件では沼田も精いっぱい頑張っていた。

 課の他のメンバーが遅くまで残っていても、ふだんは早々に退社することが多いのだが、さすがの沼田もこれが課の正念場だとわかっていたようで、八木原と共に徹夜で図面を仕上げてくれた。

 美貴は正直、沼田を少し見直したほどだ。

「沼田さんも、ご苦労さまでした」

 美貴は沼田にとっておきの笑顔を向けた。
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