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牝獣の哭く夜
第2章 祝賀会の夜
ソレムニティ・グループの企画部長、諏訪龍彦は今回のプロジェクトの責任者である。
企画コンペの最終審査員でもあり、後で関係者から聞いた話だと、〈クリエイティヴ・ビュー〉を強力に推してくれたのも彼だそうだ。
ソレムニティ・グループの会長の甥にあたり、三十八歳の若さでの部長職に就いた。
縁故だけでその地位を獲得したわけではなく、アメリカの一流大学の経済学部を優秀な成績で卒業し、しばらく外資系IT企業で腕を磨いていた。
そのころから、その敏腕ぶりは業界の噂となったほどだ。
ソレムニティ・グループに加わるや、さまざまな新企画をつぎつぎと成功させ、いまやホテル業界の旋風児として名高い。美容エステに乗り出したのも、諏訪の発案だった。
実業家としての能力は誰しも認めるところだったが、その容姿もまた衆目を集めるに足るものだった。
長身で貴族的な美形。物腰もファッションも洗練されている。
にもかかわらず、まだ独身のため、口さがない者たちの好餌となっていた。