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牝獣の哭く夜
第2章 祝賀会の夜

「プレゼンの時、諏訪部長が沢村課長を見つめる眼つき、普通じゃなかったですよぉ」

 朱里のひやかしに、美貴は毅然として言った。

「それはウチのデザインを認めてくれたからでしょう。そんな言い方は諏訪さんにも失礼だし、わたしたちの努力に泥を塗るようなものよ」

 今回の企画コンペを勝ち抜いたのが、内容の良さではなく、プロジェクトの責任者の不純な動機からとでも言わんばかりの部下の言葉に、美貴は本気で腹を立てた。

 諏訪部長はエリートにありがちな傲慢なところもなく、部下の意見にも真摯に耳を傾ける。取引先と誠実に対応することで知られていた。

 会社の規模や実績よりも、いかに優秀な人材がいるか、熱意があるかで、ビジネスパートナーを選んでくれる。
 そんな諏訪部長だからこそ、〈クリエイティヴ・ビュー〉を推してくれたのだ。

 美貴のデザイン・コンセプトを正確に理解し、賛同してくれた結果だと思いたかった。

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