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牝獣の哭く夜
第16章 あかされた奸計
 あんまりだった。
 あまりにひどい仕打ちだった。

 女としてのプライド、人としての矜持。

 それが片桐や沼田によって無残に打ち砕かれた後に、わずかに残った支えが諏訪への信頼と思慕だった。

 それなのに――

(諏訪部長が、すべてを裏で操っていた黒幕だったなんて……)

 最後の拠り所だった感情に唾を吐きかけられ、泥足で踏みにじられてしまった。

 女性がキャリアとして、才能だけで生きてゆくのがどれほどきびしいことか。
 男性優位の社会の中で、さまざまな偏見や不公平にもめげず、美貴はこれまで必死で頑張ってきた。
 人の数倍も努力してきた。

 そして、ソレムニティの設計コンペで入賞し、諏訪部長と出会った。

 やっと自分を認めてくれる人に出会えたと思った。
 信頼できる素晴らしい男性だと感じられた。

 この人に認められるのが、どんなにうれしかったことか。

 尊敬していたのだ。
 憧れ、ひそかに慕ってもいたのだ。

 そんな諏訪が、女性を性欲の対象としてしか見ない下劣な男たちの黒幕だったとは。

 信じたくなかった。

 美貴を支えていた最後のものが、音をたてて崩れていった。
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