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牝獣の哭く夜
第17章 春深く
「あ、ああっ……はあん……ああっ、あんっ」

 美貴の声が次第に官能に染まってゆく。
 巨根を捻じ込まれてうねる裸身の、なんと美しいことか。

 昔から諏訪はすべてにおいて横暴で利己的な男だったが、しかし、洗練された感性の持ち主でもあった。
 友人もガールフレンドも、ファッションや趣味も、彼の周りにはすべて一流のものが集まっていた。
 また、そうでなければ歯牙にもかけなかった。
 なによりも本人が、家柄も容姿も頭脳も才能も一流品だった。

 諏訪の友人の中で、唯一、沼田だけが場違いな存在だった。

 肥満体の醜男。頭も要領も悪い劣等生を、どうして相手にしてくれたのか、沼田にはよく分からない。
 高級食材ばかり食べすぎて飽きた時に、ちょっと試してみたくなる悪食みたいなものだったのかもしれない。

 ふとしたきっかけで、他に友人もいなかった沼田が本や映画が好きなのを知った諏訪は、からかい半分なのか、どんな映画が面白いか、と訊ねてきた。
 諏訪は沼田が薦める映画を気に入ってくれた。
 諏訪の部屋で夜遅くまで、そんな映画について熱く語り合ったものだった。

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