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牝獣の哭く夜
第2章 祝賀会の夜
それまで黙ってワイングラスを傾けていた沼田が、突然、口をはさんだ。
「そういえば、東亜設計の片桐専務がそんな噂を流してるって、小耳にはさんだな」
「噂って?」
「沢村さんが色仕掛けでこのプロジェクトを獲得したって」
「えーっ、ひどい」
東亜設計はこれまでソレムニティ・グループ施設の内装設計のほとんどを請け負っていた会社だ。
担当の片桐専務は諏訪部長とはIT企業時代からのつき合いである。
今回の企画コンペも結局は東亜設計のものだろうというのが、大方の見方だった。
「ウチに負けた腹いせに、ひどいことを言うよなあ」
隆介は憤懣やるかたないようだ。
八木原が淡々と、
「東亜設計は手堅い仕事をするけど、デザインに新鮮味がないからね。ソレムニティが新しく乗り出そうとする新事業にはふさわしくないよ。諏訪部長だって、そう思ったからこそ企画コンペにしたんだろ。その時点で、東亜の線はなかったね」