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牝獣の哭く夜
第1章 恥辱のはじまり

 シティホテルの一室。
 床にはカーペットが敷かれ、すぐ脇にはセミダブルのベッドが置かれている。

 ベッドの前に立つ男は、ネクタイを外したワイシャツ姿だった。
 ボタンを下まで外して、肌着ごしでもたるんだ腹がわかった。
 スラックスは脱いでいる。
 靴下だけの太い脚には剛毛がびっしりと生えて、臭気が漂ってきそうである。

 いつまでも動かない美貴にいらだったのか、男は高圧的な声を出した。

「設計で大事なのは精確さとスピード。沢村課長の口癖でしょう。早くしなよ」

 男の醜い顔を、精いっぱいの蔑みを込めてにらみ上げる。

「怒った顔も素敵ですよ、沢村課長。その見下したような眼でにらまれると、ゾクゾクしちゃいます」

 男はナマコのような分厚い唇に、薄ら笑いを浮かべた。

「でもね、時間をかければかけるほど、困るのは課長のほうだということをお忘れなく」
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