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牝獣の哭く夜
第1章 恥辱のはじまり
 設計会社〈クリエイティヴ・ビュー〉で、美貴はデザイン設計二課の課長をしている。だから彼女を「課長」と呼ぶことは間違いではない。

 けれど、こんな状況でことさらに役職をつけるのは、美貴のプライドを貶《おとし》めようとしてのことだ。
 自らの意思に反して、下劣な部下の指示に従わざるをえない女上司――今の立場をより意識させて、嘲笑おうというわけだ。

 その証拠に、沼田峻一が職場で美貴を呼ぶときは、いつも「沢村さん」だった。

 三十三歳の美貴より五歳も年上の部下。
 主任という肩書をもっているが、実のところ仕事をやる意欲も能力も乏しい、課の厄介者である。

 そんな無能男の足元に、将来を嘱望されている女性キャリアが跪《ひざまづ》いている。ただ跪いているのではない。

 美しい女性管理職は素っ裸に近い姿だった。
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